エビデンスに基づくピラティス

本稿はPHYSIO⁻ONE独自に厳選した論文・エビデンス、さらに著者の臨床経験・卒後教育プログラムに基づきピラティスの現時点でのエビデンスについてまとめたものである

基礎情報

ピラティスとは?

ジョセフ・ピラティスによって考案されたボディコンディショニング法の一つ。フィットネス分野だけではなくリハビリの分野においても活用されている。そのエビデンスレベルは高いものが多く、また、ピラティスを行う際のリスクはとても低いため、オーストラリアでは保険診療内でピラティスが行われることもあった。

  • 研究では以下の効果があると報告されている。
    ✔姿勢改善¹⁾
    ✔下肢の持久力向上¹⁾
    ✔バランス能力¹⁾
    ✔生活の質¹⁾
    ✔身体の柔軟性¹⁾
    ✔疼痛緩和¹⁾
  • ピラティスは6つの原則に基づいてエクササイズが行われる
    1. Centering(センタリング) ‐ 腹横筋、横隔膜、腹斜筋、脊柱多裂筋、骨盤底筋群からなる体幹のコアマッスルを意識しながらエクササイズを行う。パワーハウスとも呼ばれる。これらの筋群は腰椎、骨盤エリアの安定に貢献すると考えられているためである。
    2. Concentration (集中)‐ 身体の動き方に集中しながらエクササイズが正しく行われているようにする。
    3. Control (コントロール) – エクササイズは動作、姿勢をコントロールすることに集中して行う。
    4. Precision (正確性) – 特に正確な動作と動作の質に注意して行う。
    5. Breathing (呼吸) – 呼吸のリズムに合わせてエクササイズを行う。呼吸は体幹深部の筋肉の活動向上を助けるため。
    6. Flow (フロー)- スムースにエクササイズが行えるかを大切にしながら一つのエクササイズから次のエクササイズまでが流れる動作のなかで行う。

慢性腰痛におけるピラティス

✔システマティックレビューにより、マッサージ、エクササイズを含む通常のケア、ストレッチ、サイクリングや体幹トレーニングと比べてピラティスの慢性腰痛患者への有用性が示されている(疼痛の減少、機能障害だけではなく社会的な損失も評価するOswestryDisability Indexの改善などを含む)³⁾⁴⁾

✔このシステマティックレビューに含まれたピラティスのプログラムは以下のようにまとめられた
・週に1-3回行われた
・4-15週間行われた
・1回のセッションは30-60分
・マット、リフォーマーを用いたピラティスのどちらとも行われた

✔他の文献では効果を得るために以下が推奨されている²⁾
・1回のセッションは30-60分を週に2-3回行い、3-6か月続ける。インストラクターによる指導が必要。

これらの推奨はピラティスのプログラムを組むときに、どのくらいで効果が期待できるか、週に何回行うかの指標となり患者教育の一環として伝える。

現時点でピラティスの数あるエクササイズの中でもどのエクササイズが最も効果的であるかを調べた研究は見当たらない。しかし、マットとリフォーマーピラティスを調べた研究ではどちらも効果的であり、どちらがより良いという結果も得られていないため、患者個人に合わせたピラティスエクササイズを選択する。

✔リフォーマーによってより良い効果が得られた研究では、プラセボ効果によるもの、または器具を用いることにより患者の感覚器により多様な刺激を与えるからであるとも考えられている²⁾

✔96人を対象にした慢性腰痛の患者の中で、どの患者グループでより効果が期待できるかについて調べた研究では以下の特徴を持った患者が最もピラティスに適しているとされた²⁾
・腰椎屈曲可動域が70°以下
・現在の症状が発症してから6か月以内
・1週間以内に下肢への症状がない
・BMI 25以上
・股関節の内旋・外旋可動域の合計が25°以上

乳癌治療手術後の患者におけるピラティス

乳癌治療手術後の患者におけるピラティスの効果も研究対象となっており、システマティックレビューが発表されている。この分野におけるピラティスのエビデンスはまだ少ないがこれから増えていくと考えられる。

✔4個の研究結果をまとめたシステマティックレビューではステージ1-3全ての乳癌患者が含まれており、自宅でできる簡単なエクササイズグループ、またはエクササイズをしなかったグループに比べてピラティスを行ったグループでは機能的スコアが有意に向上した、さらに可動域、疼痛、疲労感の改善も報告されている。45-60分のセッションを週に3回8-12週間行われた⁵⁾

閉経後の女性におけるピラティスの効果

少子高齢化にともない高齢者の割合は増えていくばかりである。高齢者においては運動をすることが推奨されているがピラティスも選択肢の一つとして考えられる。この分野においての研究は少ないが、ランダム化比較試験が行われており高齢者への身体的機能低下予防、さらに認知機能低下の予防においても効果が期待されている。

✔ランダム化比較試験では110人のスペイン人の閉経後女性(60歳以上)を対象に行われた。ピラティス群では理学療法士によってプログラムがデザインされ合計60分のセッションが週2回の頻度で12週間行われた。コントロール群では運動を推奨する教材が渡されたがトレーナーを付けて行うトレーニングなどは禁止された⁶⁾
しかし、このランダム化比較試験においては身体的機能(下肢筋力、機能的柔軟性)の向上はみられたが、認知機能は言語流暢性の向上にとどまり、グローバル認知機能に有意な変化は見られなかった⁶⁾
※機能的柔軟性は座位でのリーチテストや背中に手を組むことができるかのテストによって評価された
ピラティスエクササイズの特徴であるリズムや身体コントロールを中心にした動きは前頭葉の刺激、海馬の体積増加と関連していることから認知機能低下の予防の効果が期待されていたが、現時点での研究では身体的機能の向上効果の方がより顕著に表れていると言える。

参考文献

  1. 【Review】Melissa MazzarinoDebra KerrMeg E Morris. Pilates program design and health benefits for pregnant women: A practitioners’ survey. Journal of bodywork and movement therapy. 2018 Apr;22(2):411-417
  2. 【Review】Małgorzata EliksMałgorzata Zgorzalewicz-StachowiakKrystyna Zeńczak-Praga. Application of Pilates-based exercises in the treatment of chronic non-specific low back pain: state of the art. Postgraduate Medical Journal. 2019 Jan;95(1119):41-45.
  3. 【Systematic Review】Tiê P YamatoChristopher G MaherBruno T SaragiottoMark J HancockRaymond W J G OsteloCristina M N CabralLuciola C Menezes CostaLeonardo O P Costa. Pilates for low back pain. Cochrane database for systematic reviews. 2015 Jul 2;2015(7):CD010265.
  4. 【Systematic Review】Cherie WellsGregory S KoltPaul MarshallBridget Hill, Andrea Bialocerkowski. The effectiveness of Pilates exercise in people with chronic low back pain: a systematic review. Plos One. 2014 Jul 1;9(7):e100402.
  5. 【Systematic Review】Roberta Costa EspíndulaGabriella Barbosa NadasMaria Inês da RosaCharlie FosterFlorentino Cardoso de AraújoAntonio Jose Grande. Pilates for breast cancer: A systematic review and meta-analysis. Revista da Associacao Medica Brasileira(1992). 2017 Nov;63(11):1006-1012.
  6. 【RCT】Effectiveness of A Pilates Training Program on Cognitive and Functional Abilities in Postmenopausal Women. Patricia Alexandra García-GarroFidel Hita-ContrerasAntonio Martínez-AmatAlexander Achalandabaso-OchoaJosé Daniel Jiménez-GarcíaDavid Cruz-DíazAgustín Aibar-Almazán. Internationa Journal of environmental research and public health. 2020 May 20;17(10):3580.

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