変形性指関節症 CMC / Hand Osteoarthritis

本稿はPHYSIO⁻ONE独自に厳選した論文・エビデンス、さらに著者の臨床経験・卒後教育プログラムに基づき、疾患の基礎情報、理学療法評価と介入方法についてまとめたものである

基礎情報

 

病態

  • 手指の退行変性によって炎症が生じる疾患
    ✔手指の痛みや拘縮、握力の低下がみられる¹⁾
    ✔変形性母指関節症(母指OA)は、代表的な変形性指関節症(指OA)であり、以下の特徴がある¹⁾
    ・指節間(IP)関節は蝶番関節だが、母指の手根中手(CM)関節は鞍関節である
    ・指OAよりも疾病負荷が高い 
    ・リスク要因が異なり、より特定した介入ができる
    リバーテスト母指圧痛テストで陽性

✔アメリカリウマチ学会による指OAの診断基準¹⁾³⁾
・手指が痛い、うずく、硬い
・手指関節10個のうち2個以上で、硬組織増大が確認できる
・遠位指節間(DIP)関節10個のうち2個以上で、硬組織増大が確認できる
・中手指節(MP)関節の腫れが3個未満
・手指関節10個のうち1個以上で変形がみられる

※補足:手指関節10個の内訳は、左右の示指と中指のDIP関節、PIP関節、母指のCM関節
※診断基準の精度:感度94%、特異度87%

 

有病率

問診時の鑑別診断に役立つ
✔文献では以下のリスク要因が示されている

  • CM関節OAは手指OAの中で最も多い
  • CM関節OAの好発年齢は70-74歳²⁾
  • 高齢者における医師に診断されたCM関節OAの有病率
    女性5.0-5.1%、男性2.2-3.0%²⁾
  • 画像所見による有病率
    ・CM関節OA:女性21.2%、男性18.8%²⁾
    ・IP関節OA:女性28.6%。男性17%²⁾
  • 30歳以上の成人の有病率は15%、55歳以上の女性の場合は66%
  • 日本人は欧米人に比べて有病率が低い²⁾
  • CMC関節OAはIP関節OAと合併することも多い。手指関節になんらかの症状を持っている高齢者1000人を調べたところ51%がCM関節OA、42%がIP関節OAであった。そのうちどちらも持っていた高齢者の割合は22%であった

リスク要因

問診時の鑑別診断や評価時、介入プラン時には以下のリスク要因を考慮する
✔文献では以下のリスク要因が示されている

  • 握力が強い
    ・CM関節の過可動性を持つ男性は、24年後にOAになる確率が3倍²⁾
    ・PIP関節、MP関節OA進行のリスクになる
  • 手指関節の過可動性
    ・CM関節OA進行のリスク²⁾
    ・その一方でPIP関節OAを予防する要因ともなる
  • 繰り返した手作業を伴う職種²⁾
  • 肥満²⁾
  • 遺伝:CMC関節OAへの影響が大きい²⁾

予後の予測

  • 予後の予測は重症度や状況によって異なる
  • しかし、変形性関節症が自然治癒することはないので、長期間での経過の観察が必要である

 

評価

基礎情報をもとに鑑別診断や評価・介入プラン作成に必要な情報を聴取する

問診

  • 現在の症状
    ・手指に痛み、うずき、かたさがある
  • 発症のきっかけ
    ・徐々に痛みが始まってきた
  • 悪化要因
    ・握力が弱く、蓋をあける、鍵を回す、パッケージを開けるのが難しい
    ・・単純な手作業
  • 緩解要因
    ・安静
  • 既往歴
    ・外傷もしくは手指を酷使した過去がある
    ・手指の関節がもともと硬かった

視診・動作分析

  • 手を強く握り過ぎる
  • MP関節に腫れがみられる(3個未満)
  • 手指関節10個のうち1個以上で変形がみられる

触診

  • 骨組織:
    ・手指関節10個のうち2個以上で硬組織増大が確認できる
    ・DIP関節10個のうち2個以上で硬組織増大が確認できる
  • 筋組織:母指内転筋、短母指伸筋、母指対立筋、短母指外転筋

主な評価項目

  • 可動性評価
    ・PIP関節、DIP関節、MP関節ROM:屈曲、伸展
    ・CM関節ROM:母指屈曲、伸展、橈側外転・尺側外転、掌側外転・内転
     ※CM関節は過可動性に要注意
  • 筋力評価
    ・握力:指OA患者の握力は同年代平均の60%ほどとなる

鑑別診断

  • 頚椎スクリーニング
  • 肩関節スクリーニング
  • 肘関節スクリーニング
  • ドケルバン病:手背側の第一コンパートメントに圧痛、フィンケルシュタインテスト
  • 橈側手根屈筋腱炎:橈側手根屈筋のストレステストで痛みが誘発される

 

介入プラン

エビデンスに基づいた介入方法

ガイドラインおよび著者の臨床経験をもとに、PHYSIO⁻ONE独自に作成した介入プラン例を紹介する

変形性指関節症への介入の基本的な流れは症状緩和→機能改善である
本疾患ページではこの流れにそって解説していく

症状緩和

  • 装具療法
    ・最適な装具のタイプは明らかにされていないため市販の手指関節を覆う装具で十分な効果が期待される。特に母指CM関節に症状がある場合は装具を検討する
    ✔装具療法単独の介入でも装具療法なしに比べて痛みや機能の改善が望める。しかし、最適なタイプの装具は個人によって差がある。長期で効果が持続するかは不明である⁶⁾⁷⁾
    ✔母指CM関節症は手指IPの変形性関節症よりも痛みや機能制限が重症な場合が多い。そのため長期で夜に装具を装着することが推奨される。痛みや機能改善に繋がるという報告はあるがそのメカニズムは明らかにされていない¹³⁾
  • 運動療法
    ・他の関節の変形性関節症と違い手指の変形性関節症は運動療法による効果は臨床的に小さいが、リスクが少ないこと他に効果的な介入方法がないことから患者の意向も考慮し出来る限りのことをする
    ・可動域運動:手指ゴムバンド抵抗運動
    ✔装具療法、温熱療法、徒手療法と並行して行った場合、親指を使ってつまむ動作の痛み、つまむ強さ、機能の改善が期待できる。この効果が長期間続くかは不明である ⁵⁾
    ✔運動療法のエビデンスレベルは低く臨床的に大きな効果が期待できるかは疑問である⁵⁾
    ✔レジスタンストレーニングは疼痛緩和に効果はあるかもしれないが、有意な機能向上、筋力向上にはつながらなかった¹²⁾
  • 徒手療法
    ・評価において異常な筋スパズムが確認できる場合は一時的な疼痛緩和効果が期待できる
    ・疼痛管理:母指内転筋、短母指伸筋、母指対立筋、短母指外転筋、浅指屈筋トリガーポイント
    ・母指CM関節可動域改善:母指CM関節モビライゼーション
    ✔短期または中期において、徒手療法は痛みの改善が期待できる。運動療法と並行して行うことが推奨される⁶⁾⁷⁾
  • 患者教育:
    ・介入初期は痛みが悪化する蓋を開けるなどの動作を避ける
    ・こまめに関節をストレッチするなどの習慣をつける
    ・自然治癒することはないのでセルフケアを指導する

 

参考文献

  1. 【Guideline】R AltmanG AlarcónD AppelrouthD BlochD BorensteinK BrandtC BrownT D CookeW DanielR Gray, et al. The American College of Rheumatology Criteria for the Classification and Reporting of Osteoarthritis of the Hand. Arthritis and Rheumatism. 1990 Nov;33(11):1601-10. 
  2. 【Review】Margreet KloppenburgSjoerd van BeestFéline P B Kroon Thumb Base Osteoarthritis: A Hand Osteoarthritis Subset Requiring a Distinct Approach. Best practice and research. Clinical Rheumatology. 2017 Oct;31(5):649-660.
  3. 【Guideline】Kolasinski, S. L., Neogi, T., Hochberg, M. C., Oatis, C., Guyatt, G., Block, J., … Reston, J. (2020). 2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation Guideline for the Management of Osteoarthritis of the Hand, Hip, and Knee. Arthritis & Rheumatology.
  4. 【Systematic Review】Østerås, N., Kjeken, I., Smedslund, G., Moe, R. H., Slatkowsky-Christensen, B., Uhlig, T., & Hagen, K. B. (2017). Exercise for Hand Osteoarthritis: A Cochrane Systematic Review. The Journal of Rheumatology, 44(12), 1850–1858.
  5. 【Systematic Review】Lucia BertozziKristin ValdesCarla VantiStefano NegriniPaolo PillastriniJorge Hugo Villafañe Investigation of the Effect of Conservative Interventions in Thumb Carpometacarpal Osteoarthritis: Systematic Review and Meta-Analysis. Disability and Rehabilitation. 2015;37(22):2025-43.
  6. 【Systematic Review】Malene AhernJason SkyllasAnne WajonJulia Hush The Effectiveness of Physical Therapies for Patients With Base of Thumb Osteoarthritis: Systematic Review and Meta-Analysis. Musculoskeletal Science and Practice. 2018 Jun;35:46-54.
  7. 【Clinical Trial】Zina ModelAndrew Y LiuLana KangScott W WolfeJayme C BurketSteve K Lee Evaluation of Physical Examination Tests for Thumb Basal Joint Osteoarthritis. Hand (New York, N.Y.), 2016 Mar;11(1):108-12.
  8. 【Clinical Trial】Armstrong, A. L., Hunter, J. B., & Davis, T. R. The prevalence of degenerative arthritis of the base of the thumb in post-menopausal women. Journal of Hand Surgery(Edinburgh, Scotland), 1994 19(3), 340–341.
  9. 【Review】Dias, R., Chandrasenan, J., Rajaratnam, V., & Burke, F. D. Basal thumb arthritis. Postgraduate Medical Journal 2007, 83(975), 40–43.
  10. 【Systematic Review】Kwok, W. Y., Plevier, J. W. M., Rosendaal, F. R., Huizinga, T. W. J., & Kloppenburg, M. (2013). Risk Factors for Progression in Hand Osteoarthritis: A Systematic Review. Arthritis Care & Research, 65(4), 552–562
  11. 【Systematic Review】Nicoló Edoardo MagniPeter John McNairDavid Andrew Rice. The effects of resistance training on muscle strength, joint pain, and hand function in individuals with hand osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Research & Therapy.2017 Jun 13;19(1):131.
  12. 【Systematic Review】Liuzhen YeLeonid KalichmanAlicia SpittleFiona DobsonKim Bennell.Effects of rehabilitative interventions on pain, function and physical impairments in people with hand osteoarthritis: a systematic review. Arhritis Research and Therapy.

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