ドケルバン病 DeQuervain’s Syndrome

本稿はPHYSIO⁻ONE独自に厳選した論文・エビデンス、さらに著者の臨床経験・卒後教育プログラムに基づき、疾患の基礎情報、理学療法評価と介入方法についてまとめたものである

基礎情報

 

病態

  • 短母指伸筋腱と長母指外転筋が手背側の第一コンパートメントに通るとこで起こる腱鞘炎
  • 狭窄性腱鞘炎とも呼ばれる
    ✔スマホのタイピングなど、上記の筋肉を酷使することで発症する²⁾

臨床で代表的にみられる症状
手関節の母指側の痛みや腫れ
・短母指伸筋腱と長母指外転筋の収縮時痛
・手背側の第一コンパートメントの圧痛
フィンケルシュタインテストの陽性
・他動で母指屈曲と手関節尺屈を行うと痛みが誘発される

 

有病率

問診時の鑑別診断に役立つ
✔文献では以下の有病率が示されている

  • 有病率は、男性は0.5%、女性は1.3% ¹⁾
  • 年間発生率は、男性1000人中0.6人、女性1000人中2.8人 ⁴⁾
  • 40歳以上での年間発生率は1000人中2.0人、20歳未満では1000人中0.6人 ⁴⁾

リスク要因

問診時の鑑別診断や評価時、介入プラン時には以下のリスク要因を考慮する
✔文献では以下のリスク要因が示されている

  • 女性:男性に比べリスク4.45倍(95%CI 4.28₋4.62) ⁴⁾
  • 年齢40歳以上:20歳未満に比べリスク3.65倍(95%CI 3.26₋4.09)⁴⁾
  • 妊娠 ¹⁾
  • 関連の可能性がある他のリスク要因¹⁾
    ・出産後
    ・授乳
    ・手作業を伴う職種

予後の予測

  • 回復までの期間は重症度や状況によって異なる

 

評価

基礎情報をもとに鑑別診断や評価・介入プラン作成に必要な情報を聴取する

問診

  • 現在の症状
    ・手関節の母指側の痛みや腫れ
  • 発症のきっかけ
    ・徐々に痛みが発症してきた
  • 悪化要因
    ・手をよく使う(例:デスクワーク、赤ちゃんを抱っこする、クロスカントリースキーなど)
    ・物を掴んだり、持ちあげたり、ハンマーなどの工具をよく使う時
  • 緩解要因
    ・安静

視診・動作分析

  • 手関節の母指側が腫れている
  • 手を強く握り過ぎている
  • デスクワークでの姿勢評価:不良姿勢
  • ばね指現象(ばね指は保存療法の予後の不良を予測する因子の一つ)

触診

  • 母指背側、手背側の第一コンパートメントの圧痛
  • 骨組織:第一中手骨手根管関節
  • 筋組織:短母指伸筋腱、長母指外転筋

主な評価項目

  • 可動性評価
    ・母指IP関節ROM
    ・第一中手骨手根管関節ROM
    ・手関節ROM:掌屈(手指屈曲、伸展)、背屈(手指屈曲、伸展)、尺屈、撓屈
     ※他動で母指屈曲と手関節尺屈を行うと痛みが誘発される
    ・筋伸長テスト:大胸筋、小胸筋、広背筋
  • 神経力学テスト
    ULTT 2b:橈骨神経のストレステスト

鑑別診断

 

介入プラン

エビデンスに基づいた介入方法

エビデンスおよび著者の臨床経験をもとに、PHYSIO⁻ONE独自に作成した介入プラン例を紹介する

内側上顆炎への介入の基本的な流れは疼痛緩和・機能回復→再発予防である
本疾患ページではこの流れにそって解説していく

  • コルチゾール注射
    ・理学療法の領域ではないため担当の医師と連携する
    ✔現時点の文献の報告ではコルチゾール注射が保存療法で症状の改善、機能回復において一番効果的な治療法であると報告されている(成功率は62-100%)¹⁾⁵⁾
  • 装具療法
    ・他の介入方法と併せて行うことが奨められる
    ✔装具療法(母指スプリント)単独での介入の成功率は14₋18% ¹⁾⁵⁾
  • 運動療法:
    評価に基づいて大胸筋・小胸筋ストレッチ、広背筋ストレッチ
    ・また短母指伸筋腱と長母指外転筋腱の強度を向上させるために等尺性収縮運動から始め、徐々に求心性収縮運動、遠心性収縮運動を加えていく
    ✔症例報告にとどまるが運動療法(例:ストレッチ、筋力トレーニング、可動域運動)で症状が改善したと報告されている⁶⁾
    ✔遠心性収縮運動の例(ハンマーカール)

    Rabin&Israeli. 2015. 図2より引用⁶⁾
  • 徒手療法:
    ・評価において異常な筋スパズムが確認できる場合は一時的な疼痛緩和効果が期待できる
    ・疼痛管理:母指CM関節モビライゼーション、
    ・母指屈曲改善:母指屈曲筋トリガーポイント
    ・母指外転改善:長母指外転筋、短母指外転筋トリガーポイント
    ・手関節尺屈改善:手根骨モビライゼーション
    ✔症例報告にとどまるが徒手療法(例:リラクセーション、母指CM関節モビライゼーション)での改善例が報告されている⁷⁾
  • アイスパック:
    ・一時的な疼痛緩和効果が期待できるため使用を検討する。患部へ直接当てるのではなく濡れたタオルを挟む。一回10分以内を目安に数回行う
  • 患者教育:
    ・短母指伸筋腱と長母指外転筋への負担を減らすよう生活指導や活動制限を指導する
    ・非利き手も使う
    ・特に子育て時は、赤ちゃん抱っこする回数を減らす
    ・デスクワークの場合は、人間工学に基づいたマウス、キーボードの購入も検討する
    こちらのページも参照人体工学に基づくデスク環境設定

再発予防

  • 現時点で再発予防について詳しく調べた研究は見当たらないため短母指伸筋腱と長母指外転筋への負担を継続して減らすことが中心となる

参考文献

  1. 【Systematic Review】Patrick Rowland, Nigel Phelan, Sean Gardiner, Kenneth N Linton, and Rose Galvin The Effectiveness of Corticosteroid Injection for De Quervain’s Stenosing Tenosynovitis (DQST): A Systematic Review and Meta-Analysis. Open Orthopaedic Journal. 2015; 9: 437–444. 
  2. 【Review】Ritu GoelJoshua M Abzug De Quervain’s Tenosynovitis: A Review of the Rehabilitative Options. Hand (N Y). 2015 Mar;10(1):1-5.
  3. 【Case Report】Dustin Adam GreenhillJoseph J ThoderHesham Abdelfattah Triggering of the Abductor Pollicis Longus in Association With deQuervain’s Tenosynovitis. BMJ case report. 2017 Jul 31;2017:bcr2017220517.
  4. 【Clinical Trial】Wolf JM, Sturdivant RX, Owens BD. Incidence of De Quervain’s Tenosynovitis in a Young, Active Population. J Hand Surg Am. 2009 Jan;34(1):112-5.
  5. 【Review】Julie E AdamsRohan Habbu Tendinopathies of the Hand and Wrist. The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons. 2015 Dec;23(12):741-50.
  6. 【Clinical Trial】Alon RabinTomer IsraeliZvi Kozol Physiotherapy Management of People Diagnosed with de Quervain’s Disease: A Case Series. Physiotherapy Canada. 2015 Aug;67(3):263-7.
  7. 【Case Report】Karen Maloney Backstrom Mobilization with movement as an adjunct intervention in a patient with complicated de Quervain’s tenosynovitis: a case report. Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2002 Mar;32(3):86-94; discussion 94-7.

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