肘内側上顆炎 Medial Epicondylalgia

本稿はPHYSIO⁻ONE独自に厳選した論文・エビデンス、さらに著者の臨床経験・卒後教育プログラムに基づき、疾患の基礎情報、理学療法評価と介入方法についてまとめたものである

基礎情報

 

病態

  • 肘の内側上顆に付着する腱が炎症を起こす障害
    一般的には野球肘、ゴルフ肘とも呼ばれている

  • 受傷機転:
    ✔手関節の掌屈、回内の役割を担う筋肉の繰り返した遠心性収縮に伴う肘にかかる過負荷外反によって引き起こされる。このような力が生じる代表的な動作には野球の投球、打ち方の悪いゴルフスイング、やり投げなどがある ²⁾

臨床で代表的にみられる症状
・内側上顆に局部的に起こる持続的な痛み、そして近位前腕に放散痛がある
・圧痛が内上顆より前方遠位5₋-0㎜にあり、軟組織の腫れを伴う
・肘と手関節の可動域は正常である
・野球では特にレイトコッキング期で痛みが悪化する
・ゴルフではスイングの初動時に痛みが悪化する

 

有病率

問診時の鑑別診断に役立つ
✔文献では以下の有病率が示されている

  • 一般人での有病率:男性 0.3-0.6%、女性 0.3-1.1% ¹⁾
  • 労働者での有病率:0.2-3.8% ¹⁾
  • 上顆炎のうち9.8%から20%が上腕骨内側上顆炎 ³⁾
  • 40代から50代で一番発症しやすい ³⁾
  • 利き腕で発症しやすい ⁴⁾

リスク要因

問診時の鑑別診断や評価時、介入プラン時には以下のリスク要因を考慮する
✔文献では以下のリスク要因が示されている

  • 人間工学に反した手の使い方は上顆炎と関連している ⁴⁾
  • 手を酷使する作業を伴う職業はリスク要因になりえるが、現時点では完全な合意に至っていない ¹⁾
  • 心理的ストレス:リスク4.9倍 ⁴⁾
  • 1日1時間以上、肘を屈伸する:リスク5.1倍 ⁴⁾

予後の予測

  • 詳しい予後の予測は個人の状況、また、重症度によって異なる
    ✔自然治癒することも可能であり、80%以上は1年以内にほっといても症状が改善したと報告されている¹⁾
    ✔また、患者の半分ほどしか医療機関を受診しないと予測されている ¹⁾
    ✔4-6ヵ月の保存療法でも回復しない場合に手術が治療選択肢に入る ³⁾

 

評価

基礎情報をもとに鑑別診断や評価・介入プラン作成に必要な情報を聴取する

問診

  • 現在の症状
    ・内側上顆に局部的に起こる持続的な痛み、そして近位前腕に放散痛がある
  • 発症のきっかけ
    ・外傷が原因になる場合もある
    ・手を酷使する職種、またはスポーツをしている
  • 悪化要因
    ・繰り返した動作により悪化する
    ・手首の屈曲
  • 緩解要因
    ・特発性で安静にしているにも関わらずなかなか回復しない

視診・動作分析

現在の症状や機能レベルの把握に役立つ

  • 野球では特にレイトコッキング期(リード脚の足底全体が着地し,投球側の手が最大拳上した時点)で痛みが悪化する。
  • テニスやゴルフではスイングの初動時に痛みが悪化する
  • 肘を保護するために、肘を屈曲した状態を保っていることが多い。
  • 肩甲骨:過剰な肩甲骨下制、不十分な肩甲骨上方回旋

触診

  • 圧痛テスト:圧痛が内上顆より前方遠位5₋10㎜にあり、軟部組織の腫れを伴う
  • 骨組織:内側上顆
  • 筋組織:掌屈筋群、円回内筋、方形回内筋

主な評価項目

  • 可動性評価
    ・肘関節ROM:屈曲、伸展
    ・手関節ROM:掌屈、背屈

  • 筋力評価
    ・手関節MMT:掌屈筋、回内筋
     ※手関節の掌屈、回内を抵抗した時に痛みが誘発される、また、筋力が健側と比べて低下している
    ・握力

鑑別診断

 

介入プラン

エビデンスに基づいた介入方法

ガイドラインおよび著者の臨床経験をもとに、PHYSIO⁻ONE独自に作成した介入プラン例を紹介する

内側上顆炎への介入の基本的な流れは急性期→回復期→再発予防である
本疾患ページではこの流れにそって解説していく

急性期

  • 患者挙育
    ・特に問診で発症のきっかけが外傷でなく負荷の蓄積が問題であると推測できる場合は介入初期は悪化動作や活動の制限、また、場合によっては安静を奨める
    ・手を酷使する作業をする場合は、できる限りこまめに休憩をとる
    ・工具を使う場合は、できるだけ大きなグリップで自分の手にあったものを使用する
    ✔痛みが悪化する動作や繰り返し動作は避ける²⁾
    ✔野球選手で尺骨側副靭帯を損傷している場合、6-12週間、投球を控える³⁾
  • アイスパック
    ・一時的な疼痛緩和を期待できるため検討する。特に動作や活動後に行う。肌に直接当てるのではなく濡れたタオルを当てて行うことを推奨する。一回10分以内を数回繰り返す。
    ✔冷却療法は除痛効果を期待できる³⁾
  • 装具療法・テーピング
    ・肘を圧迫する装具が奨められる
    ・キネシオテープは筋疲労が蓄積している筋にそって貼る
    ✔装具療法やキネシオテープは腱にかかる負担を減らせる²⁾³⁾
  • 徒手療法
    ・確立したエビデンスはないが一時的な疼痛緩和効果が期待できる
    ・疼痛管理:掌屈筋、円回内筋、方形回内筋トリガーポイント
  • 運動療法
    ・患者の反応に合わせてストレッチや掌屈筋の等尺性運動を行う

回復期

  • 患者教育
    ・各スポーツによって異なる、担当のコーチやスポーツトレーナーと連携をとる
    ✔スポーツ用品の適正を確認する(ゴルフクラブの重さ、グリップの太さなど)²⁾³⁾
    ✔スポーツ中の動作フォームやテクニックの修正²⁾³⁾
    ✔現時点では明確としたスポーツ復帰の指標がないため、評価に基づいて判断する²⁾
  • 運動療法
    ・腱の強度をあげることが主な目的となる
    ✔肘関節の可動域の正常化のためにストレッチが勧められる²⁾
    ✔野球選手など投球動作を伴うスポーツで肩関節の可動域に異常がある場合はストレッチなどで正常化を目指す。また、肩関節、肩甲骨周辺の安定性を向上するトレーニングも勧められる³⁾
    ✔求心性のOKCまたはCKCエクササイズから始め、徐々に遠心性筋力トレーニングを加える²⁾³⁾
    ✔回復期初期は腱への余計な負担を避けるために遠心性筋力トレーニングを控える³⁾
  • 徒手療法
    ・急性期に引き続き一時的な疼痛緩和効果が期待できるため状況によって検討する
    ・疼痛管理:掌屈筋、円回内筋、方形回内筋トリガーポイント
  • 装具療法・テーピング
    ・急性期と同様

再発予防

  • 理論的には遠心性筋力トレーニングを行い腱の強度を向上するのが再発の予防へと繋がるはずだが、実際に遠心性筋力トレーニングが怪我の頻度を減らすというデータは見つからなかった

臨床例

参考文献

  1. 【Review】Shiri R, Viikari-Juntura E. Lateral and medial epicondylitis: Role of occupational factors Best Pract Res Clin Rheumatol. 2011 Feb;25(1):43-57.
  2. 【Review】Nirav H AminNeil S KumarMark S Schickendantz Medial Epicondylitis: Evaluation and Management. The Journal of American Academy of Orthopaedic Surgeons. 2015 Jun;23(6):348-55.
  3. 【Review】Michael C CiccottiMichael A SchwartzMichael G Ciccotti Diagnosis and Treatment of Medial Epicondylitis of the Elbow. Clinics in Sports Medicine. 2004 Oct;23(4):693-705, xi. 
  4. 【Clinical Trial】Walker-Bone K, Palmer K, Reading I. Occupation and epicondylitis: a population based study. Rheumatol. 2012;51:305–310.

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