急性腰痛症 Acute Low Back Pain

本稿はPHYSIO⁻ONE独自に厳選した論文・エビデンス、さらに著者の臨床経験・卒後教育プログラムに基づき、疾患の基礎情報、理学療法評価と介入方法についてまとめたものである

基礎情報

 

病態

  • 無理な動作や重いものを持ち上げるなど、何かしらの原因で腰を損傷する障害
  • ぎっくり腰と呼ばれることもある
    ✔6週間未満の痛みのものを急性腰痛と呼ぶ²⁾

  • 病態生理:
    ✔腰部の筋損傷が主な原因と考えられているが、椎間関節、椎間板や関節包など、様々な組織が痛みの原因になりえる²⁾

臨床で代表的にみられる症状
・腰痛の急性の悪化
・動いた時の腰痛(特に前かがみや物を持ちあげる動作)
・腰部屈曲、伸展、回旋にともなう腰椎-骨盤の協調運動障害
・腰椎伸展筋の収縮時痛(前屈から戻る時に代償動作がみられる)
・腰部をストレッチした時の痛み
・腰部筋(脊柱起立筋、腰方形筋、大腰筋)の誘発テストで陽性
・良姿勢や体幹コントロール性を高めると、痛みが改善する

 

有病率

問診時の鑑別診断に役立つ

  • メカニカル(機械的)な腰痛の70%は、腰部の損傷か捻挫による³⁾
    その他、椎間関節症は10%、脊椎圧迫骨折は4%、椎間板ヘルニアは4%、狭窄症は3%³⁾
    悪性腫瘍である可能性は1%³⁾⁴⁾

リスク要因

問診時の鑑別診断や評価時、介入プラン時には以下のリスク要因を考慮する

✔文献では以下のリスク要因が示されている

  • 女性 ¹⁾³⁾
  • 加齢³⁾
  • 腰をかがめる、腰を捻る、重いものを持ち上げる、などを伴う職業 ¹⁾²⁾
  • 座位など同じ姿勢でいること⁴⁾
  • ストレス、うつや不安、仕事への不満など²⁾⁴⁾

注:腰痛には様々な因子が関与しているため、どのリスク要因も強いエビデンスではサポートされていない(Level B) ¹⁾

予後の予測

  • 原因がはっきりしている急性腰痛の場合、痛みの改善は1-2週間で期待できる
    ✔6週間以内で90%は改善し²⁾、12週以内に95%は改善する³⁾
    ✔その一方、2-7%の腰痛は慢性化する²⁾ 慢性の場合は、長期間で経過の観察が必要になることが多い。心理的、社会的要素も考慮する¹⁾
    ✔再発率が高く、1年以内に50-80%が再発する⁴⁾

 

評価

基礎情報をもとに鑑別診断や評価・介入プラン作成に必要な情報を聴取する

問診

  • 現在の症状
    ・腰の痛み
  • 発症のきっかけ
    ・慣れていない動作や前かがみ、重い物を持ちあげる動作によって発生した
    ・何かの拍子に急な動作により腰を痛めた
  • 悪化要因
    ・腰を動かす
  • 緩解要因
    ・安静
  • 既往歴
    ・ここ数年で何度も腰痛があ

視診・動作分析

現在の症状や機能レベルの把握に役立つ

  • 歩行:代償動作、逃避性跛行
  • 立位・座位姿勢:脊柱カーブの程度、骨盤の傾き
  • 腰椎骨盤リズム

触診

  • 骨組織:腰椎椎体、腰椎椎間板(前後副運動の可動性)
  • 筋組織:脊柱起立筋群、腰方形筋、大殿筋、中殿筋

主な評価項目

  • 可動性評価
    ・腰椎ROM:屈曲、伸展、回旋
    ・骨盤帯の可動性:前傾、後傾
     座位・立位で行い、胸椎による代償動作の有無も評価する
    ・胸椎ROM:屈曲、伸展、回旋

鑑別診断

 

介入プラン

エビデンスに基づいた介入方法

ガイドラインおよび著者の臨床経験をもとに、PHYSIO⁻ONE独自に作成した介入プラン例を紹介する

急性腰痛への介入の基本的な流れは疼痛緩和→再発予防である
本疾患ページではこの流れにそって解説していく

疼痛緩和

  • 安静
    ・出来るだけ安静は避けるよう指導する、そのためベッドから起き上がる際や座位から立ち上がる際の楽になるための動作を指導する
    ✔2-3日以上ベッド上で安静しても痛みが改善しない、または悪化する(Level A)²⁾³⁾
    ✔安静よりも活動維持の方が有用である、しかし、坐骨神経痛を伴う腰痛では安静と活動維持に明らかな差はない(Level C) ⁷⁾
  • 徒手療法
    ・一時的な疼痛緩和に有効である場合が多い。しかし、逆に悪化させるリスクもあるため強い圧で行うマッサージや患部への直接的なアプローチは避ける
    ・疼痛管理:脊柱起立筋群、腰方形筋、大殿筋、中殿筋トリガーポイント、腰椎PAモビライゼーション(腹臥位において腰椎棘突起を前方に押し出す関節モビライゼーション方法)
    ✔脊椎に対する徒手療法は、短期間の効果は認められるかもしれない(Level B)³⁾
    ✔特に急性および可動域制限を伴う腰痛の場合、痛みの軽減、機能向上のために徒手療法が推奨される。(Grade A)¹⁾ 
  • 運動療法
    ・痛みが悪化しない程度で行う。例:散歩やステップ動作
    ✔低負荷での有酸素運動が急性期には推奨される。腰背部に特化したストレッチや筋力トレーニングは推奨されない(Level A)²⁾³⁾
  • 患者教育
    ・正しい姿勢は個人差があるため患者にとって一番快適な姿勢を取るように指導する
    ・長時間1つのポジションを保つことは避けるよう指導する
    ・睡眠時などに腰に負担がかからないように、枕などを膝の間や膝の下に置く
    ✔急性の場合、痛みが悪化するような動作は避けてもらうが、動ける範囲でできるだけ普段通りの生活をする。ベッド上での安静は避けるよう指導する²⁾
  • 投薬
    ・理学療法の領域ではないため担当の医師や薬剤師と連携する
    ✔必要であればNSAIDsの服用も推奨される²⁾ 初期に抗炎症剤や筋弛緩剤は効果あり(Level A)³⁾
  • 温熱療法
    ・痛みのせいで身体が過度に緊張してしまう場合にホットパックで緊張を緩ませることを検討する
    ✔痛みの緩和、機能向上に有効かもしれない(Level B)³⁾
  • その他
    ✔マッサージやTENSは推奨されない。腰部牽引は行うべきでない²⁾

再発予防

  • 腰痛は様々な因子によって引きおこるため、問診においてどのような要因が痛みに繋がったかを推測し評価にもとづいて指導する

 

参考文献

  1. 【Guideline】Delitto, A., George, S. Z., Van Dillen, L. R., Whitman, J. M., Sowa, G., Shekelle, P., Denninger, T. R., et al. (2012). Low back pain. The Journal of orthopaedic and sports physical therapy, 42(4), A1–57.
  2. 【Guideline】van Tulder M, Becker A, Bekkering T, Breen A, Carter T, Gil del Real MT, Hutchinson A, Koes B, Kryger-Baggesen P, Laerum E, Malmivaara A, Nachemson A, Niehus W, Roux E, Rozenberg S. European guidelines for the management of acute nonspecific low back pain in primary care [with consumer summary] [European Commission Research Directorate General, COST B13 working group on guidelines for the management of acute low back pain in primary care] 2004
  3. 【Review】Scott Kinkade. Evaluation and treatment of acute low back pain. Am Fam Physician. 2007 Apr 15;75(8):1181-8.
  4. 【Review】Greg McIntosh, Hamilton Hall. Low back pain (acute). BMJ Clin Evid. 2011 May 9;2011:1102.
  5. 【Guideline】Chiodo AE, Alvarez DJ, Graziano GP, Haig AJ, Harrison RV, Park P, Standiford CJ, Wasserman RA. Acute low back pain: guidelines for clinical care [with consumer summary] [University of Michigan Health System] 2010
  6. 【Clinical Trial】Pamela J. Leerar, William Boissonnault, Elizabeth Domholdt, and Toni Roddey Documentation of Red Flags by Physical Therapists for Patients with Low Back Pain. Journal of Manual and Manipulative Therapy. 2007; 15(1): 42–49.
  7. 【Guideline】Osamu ShiradoYoshiyasu AraiTetsuhiro IguchiShiro ImagamaMamoru KawakamiTakuya NikaidoTadanori OgataSumihisa OritaDaisuke SakaiKimiaki SatoMasahiko TakahataKatsushi TakeshitaTakashi Tsuji. Formulation of Japanese Orthopaedic Association (JOA) clinical practice guideline for the management of low back pain- the revised 2019 edition. Journal of Orhopaedic Science.2022 Jan;27(1):3-30.

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