変形性足関節症 Ankle Osteoarthritis

本稿はPHYSIO⁻ONE独自に厳選した論文・エビデンス、さらに著者の臨床経験・卒後教育プログラムに基づき、疾患の基礎情報、理学療法評価と介入方法についてまとめたものである

基礎情報

病態

  • 足関節の軟骨がすり減り、保護組織がなくなった結果、足関節に炎症が生じる疾患
    通称、足関節OA (osteoarthritis) と呼ばれる

  • 足関節OAは一次性と二次性に大別される
    一次性:加齢や遺伝など原因疾患がないもの
    二次性:骨折、捻挫、関節リウマチなど原因疾患があるもの
    ✔膝や股関節OAと比べてほとんどの足関節OAは二次性(特に外傷後)である²⁾
    ✔骨折や足首捻挫により軟骨が損傷され、関節の不適合や不安定性が起こり、そのうち炎症を生じる ⁷⁾

✔分類²⁾
・グレード0:足関節に特に異常なし
・グレード1:骨棘が確認できるが、関節間の狭小はなし
・グレード2:関節間の狭小が確認できる、骨棘の有無は関係なし
・グレード3:関節間が消滅かほぼ消滅、関節面の変形あり

臨床で代表的にみられる症状
・しばらくじっとしていると足関節がかたくなる
・歩行や階段など荷重時に痛みがある
・足関節の筋力低下
・足関節可動域が低下する

 

有病率

問診時の鑑別診断に役立つ

✔文献では示されている有病率は以下である
 ・成人の約15%が、OAによって痛みや生活に支障がある ³⁾
 ・世界人口の成人のうち約1%が、足関節OAによって痛みや生活に支障がある ²⁾
 ・足関節OAのうち、外傷後が70-78%、リウマチなど二次性が12-13%、一次性が7-9% ³⁾

リスク要因

✔文献で示されているリスク要因は以下である
 ・外傷の既往歴
 ・足関節果部骨折³⁾
 ・足関節の回旋骨折・足関節の靭帯損傷²⁾
   ・脛骨骨幹部骨折³⁾
 ・肥満²⁾
 ・高齢³⁾

予後の予測

  • 変形した関節が元の状態に自然に戻ることはない。
    ✔発症後、OAが最終段階まで進行するまでの期間は平均して約21年 ²⁾
    ✔最終段階への進行は受傷時の年齢や外傷の種類、合併症によって大きく変化し、早くて1年、遅くて52年の場合もあった²⁾
    ✔膝関節と股関節に比べて、足関節OAは術後の予後が不良である ¹⁾

評価

問診

基礎情報をもとに鑑別診断や評価・介入プラン作成に必要な情報を聴取する

  • 現在の症状
    ・経過と共に徐々に悪化している
    ・安静時痛、動作開始時痛、夜間痛などの種類あり
    ・関節のれき音がある
    ・天候によって痛みが変化することもある
  • 発症のきっかけ
    ・典型的なものは外傷後に生じる。とりわけ過去に繰り返して足関節捻挫をした事や、骨折の既往歴がある場合が多い
  • 悪化要因
    ・長い間じっとした後に足関節がかたくなる
    ・特に寝起きはかたい
    ・歩行や階段など荷重時に痛みあり
  • 緩解要因
    ・安静

視診・動作分析

現在の症状や機能レベルの把握に役立つ

  • 立位
    ・後足部のアライメント
  • 歩行
    ・足関節の背屈制限。踵離床が早期に見られる
  • スクワット
    ・足関節の背屈制限。脛骨の前傾角度が減少。足関節前面にしわが見られない

触診

損傷部位を特定するために圧痛を調べることが重要である

  • 骨組織:アライメントおよび副運動を評価する
    ・距骨(前後)、遠位脛腓関節(前後、上下)、距腿関節(前後)
    ✔️距骨の可動性低下が見られる¹⁾
    ・骨棘(特に足関節前面)の圧痛も確認する
  • 筋組織:圧痛および筋スパズム、タイトネスを評価する
    ・腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、腓骨筋

主な評価項目

  • スペシャルテスト:足関節の安定性を確認するために行う
    前方引き出しテスト:前距腓靭帯のストレステスト(感度96%、特異度84%)
    距骨傾斜テスト:踵腓靭帯のストレステスト(感度67%、特異度75%)
  • 可動性評価
    ・足関節ROM:背 (膝屈曲位、伸展位)、底屈、内反・外反
     ✔️矢状面、前額面の動きに可動域制限が見られる¹⁾
    ・ショパール関節およびリスフラン関節:回内、回外
    ・足趾ROM
  • 筋力評価
    ・足関節MMT:背屈、底屈、内反、外反
     ✔️矢状面、前額面の動きに筋力低下が見られる¹⁾
    ・足趾MMT
    ・股関節MMT: 大殿筋、中殿筋
     ※バランス能力や機能レベルに影響を与えるため

鑑別診断

介入プラン

足関節OAの介入に関する研究は少なく、ヒアルロン酸注射や手術療法のエビデンスはあるものの、理学療法の介入について述べた文献は見当たらない。そのため、既存のエビデンスを参考にしつつ、評価結果に基づいた介入プランを立てる。

理学療法による介入

✔️足関節OAの多くは二次性であり、関節の不適合性によって悪化する²⁾
✔足関節OA患者には、健側や健常群に比べて足関節の可動域制限や筋力低下、バランス感覚低下が見られた ¹⁾

ということがすでに報告されている。そのため、評価に基づいた上で、足関節のアライメント向上、足関節の可動域や筋力、バランス感覚および機能レベルの向上を目指す。足関節OA患者は、股関節や膝関節、中足部などに二次的な制限を持つことが多いことも考慮しておく。そして、足関節変形が自然治癒することはないため、セルフケアの習慣をつけるよう指導する。

  • 徒手療法
    ・距腿関節や距骨下関節、遠位脛腓関節に制限があれば、関節モビライゼーションを実施する
    ・エクササイズチューブを足関節前面に引っ掛けて行う足関節背屈運動は、距骨の可動性向上に有効である
  • 可動域向上
    ・腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、前脛骨筋など足関節周囲筋にタイトネスがあれば、ストレッチやトリガーポイントを行う
  • 筋力トレーニング
    ・カーフレイズやチューブエクササイズなどにより足首関節周りの筋力強化を図る
    ・スクワットやランジなどは、下半身全体の筋力向上に有効である
  • バランストレーニング
    ・片足立ちやタンデム歩行によりバランス機能向上を図る
    ・足趾に筋力低下がある場合、タオルギャザーやショートフットエクササイズなどを実施する
  • インソール
    ・足関節OA患者は、過度なアライメント不良を持つことも多い。その場合は上記の理学療法を行いつつも、インソールの使用も検討する。エビデンスで効果は示されていないものの、足関節アライメント不良を改善することで、OAの進行予防を期待できるためである
  • 物理療法
    ・アイシングは疼痛緩和のために検討してもよい
    ・温熱療法は疼痛緩和や腫れ改善のために検討してもよい
    ※過度な運動により一時的に炎症が悪化した場合は、温熱療法ではなく、アイシングを選択する
  • 患者教育
    ・過度に足関節のアライメント不良を起こしている動作があれば、その動作を避けるようにきちんと指導する
    ・普段の生活の中で運動習慣をつけてもらう(例:歯磨き中にふくらはぎのストレッチなど)
    ・進行性疾患のため、運動やケアを継続することの重要性もきちんと伝える。
    ・介入初期、患者さんが運動をしたため症状が悪化したという恐怖感を持つことがないよう、痛みが悪化する運動は避ける。また、痛みが悪化した場合の対処方法もきちんと説明する。

その他

  •  
  • ヒアルロン酸注射
    ✔ヒアルロン酸は炎症性細胞浸潤の抑制、軟骨保護作用、軟骨基質分解酵素の抑制などが期待できる ⁸⁾
    ✔ひとつのランダム化比較試験ではプラセボ群に比べて有意な機能改善と疼痛の緩和が3ヵ月後に見られた。注射は1週間感覚で合計5回行われた ⁸⁾
  • グルコサミン療法
    ✔️膝関節OAに対してと同様、軟骨摩耗の進行を防ぐことが期待されるが、足関節OAに対する効果はまだエビデンスで示されていない ⁸⁾
  • 手術療法
    ✔足関節固定術が足関節OAにおいて行われる代表的な手術である⁸⁾
    ✔2020年のシステマティックレビューでは、足関節固定術と人工足関節置換術の間に、臨床アウトカム(患者の満足度、合併症、術後生存率)の有意な差は見られなかった⁹⁾

 

参考文献

  1. 【Systematic Review】Munira Mohammed Al-MahrouqiDavid Allan MacDonaldBill VicenzinoMichelle Dawn Smith Physical Impairments in Adults With Ankle Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. The Journal of Orthopaedic and and Sports Physical Therapy. 2018 Jun;48(6):449-459.
  2. 【Review】Alexej Barg et al., Ankle Osteoarthritis: Etiology, Diagnostics, and Classification. Foot Ankle Clin 2013 Sep;18(3):411-26.
  3. 【Clinical Trial】Vicctor V ea al., Etiology of Ankle Osteoarthritis. Clin Orthop Retal Res. 2009 Jul;467(7):1800-6.  
  4. 【Clinical Trial】Saltzman, C. L., et al. Epidemiology of Ankle Arthritis: Report of a Consecutive Series of 639 Patients From a Tertiary Orthopaedic Center. The Iowa Orthopaedic Journal 2005, 25, 44-46.
  5. 【Clinical Trial】Zhang JF, Song LH, Wei JN, et al. Prevalence of and risk factors for the occurrence of symptomatic osteoarthritis in rural regions of Shanxi Province, China.Int J Rheum Dis.2014 Sep 29.
  6. 【Review】Thomas D BrownRichard C JohnstonCharles L SaltzmanJ Lawrence MarshJoseph A Buckwalter Posttraumatic osteoarthritis: a first estimate of incidence, prevalence, and burden of disease. Journal of Orthopaedic Trauma. Nov-Dec 2006;20(10):739-44.
  7. 【Review】Todd O McKinleyM James RudertDaniel C KoosThomas D Brown Incongruity versus instability in the etiology of posttraumatic arthritis. Clinical Orthopaedics and Related Research. 2004 Jun;(423):44-51.
  8. 【Systematic Review】Benjamin BlochSuresh SrinivasanJitendra Mangwani. Current Concepts in the Management of Ankle Osteoarthritis: A Systematic Review. The Journal of Foot and Ankle Surgery. Sep-Oct 2015;54(5):932-9.
  9. 【Systematic Review】Yuhan LiJinquan HeYongcheng Hu. Comparison of the Efficiency and Safety of Total Ankle Replacement and Ankle Arthrodesis in the Treatment of Osteoarthritis: An Updated Systematic Review and Meta-analysis. Orthopaedic Surgery. 2020 Apr;12(2):372-377.

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