理学療法の「型」

理学療法の「型」

患者さん個々にあった最適な理学療法を提供するためには、そのベースとなる「型」が必要である。PHYSIO oneでは、その「型」のベースとして、Evidence Based Medicine (EBM)の概念を据えている。

エビデンスとは、これまでに科学的な研究報告により明らかになっていることである。例えば、膝前十字靭帯の再建術は術後4~8週間後に最も脆弱になることや、腰痛や神経症状の有無と、レントゲン所見が必ずしも一致しないことなど、これらはまず知っておくべきこととなる。介入方法においても、アキレス腱炎には遠心性負荷を加えたカーフレイズを1日100回、6週間続けると優位に疼痛の軽減がみられるといったことも明らかになっている。

もちろん、科学的エビデンスに基づいて則って行うだけで、すべての患者を助けられるわけではない。それは患者の個別性があるからである。最新の疼痛科学では、痛みは、Bio Psycho Social モデルで示されている。つまり、生物学的なところだけでなく、心理的、社会的側面も痛みの発生に関与しているということである。そのため、コミュニケーションスキルを高め、話を聞き出す問診技術を磨くことは、理学療法にとって欠かせない要素となっている。また、患者の身体的特徴を紐解いていくために、体系だった評価方法も必須である。姿勢は?動作パターンは?可動域は?筋力は?神経機能は?これらを明らかにしていくことで、より目の前の患者さんの個別性が明らかとなる。

こうして得られた情報を統合して、目の前の患者さんに対して、最適解を提供することが臨床家の役割と言える。PHYSIO oneでは、EBMをベースとした臨床を進めるための流れを以下のように提案している

理学療法の流れ

  1. 挨拶
  2. 問診および情報収集
  3. 鑑別診断
  4. 理学療法評価
  5. 介入プラン
  6. 患者教育

挨拶

  • コミュニケーションスキルの基本。相手の目を見て、相手にとって心地の良いトーンで挨拶をする。ここで心を閉ざされてしまうと、問診を進められない

問診および情報収集

  • 問診において大切なことは、全体像の把握と問題点の絞り込みである。全体像の把握っでは、基礎情報について過不足なく聴取する。既往歴、副薬歴、仕事、スポーツなどは、患者さんを理解する上においても、ゴール設定においても大切な情報である
  • 次に問題点の絞り込みである。症状の部位や範囲、症状が発生した経緯、痛みの誘発因子や緩和因子を知ることで、どの組織の問題で、治癒過程のどの時期なのかある程度、推測可能となる。例えば、バスケットボール中の方向転換時に、膝を捻ってから膝を痛めており、時々ロッキングが生じるとなれば半月板損傷の可能性が高い。長時間歩くと腰痛や下肢にしびれが生じ座ると回復するとなると、脊柱管狭窄症の可能性が高い、といったことである

鑑別診断

  • 問診および情報収集によって、見当をつけた組織の損傷であるかどうかを確認するために、スペシャルテストを用いる。スペシャルテストは、それぞれ感度や特異度を持っており、感度が高いテストはルールアウトに、特異度が高いテストはルールインに有用である
  • この時、予測した疾患ではないが可能性が高そうな疾患をルールアウトしておくことも大切である。例えば、内側半月板損傷であると予測し、マクマリーテストやテサリーテストで陽性が出たとしても、前十字靭帯や後十字靭帯、内側側副靭帯の損傷がないことを明らかにするために、それぞれのスペシャルテストを実施すべき、ということである

理学療法評価

以下の項目に分けて評価を進める

  • 姿勢評価や動作パターンの評価
  • 形態計測
  • 可動域評価
  • 筋力評価
  • 神経学・神経力学的評価
  • ファンクショナルテスト

介入プラン

  • 上記の問診やスペシャルテストを用いることで鑑別診断が可能となる。疾患が予測できれば、介入プランの立案や予後の予測が可能となる
  • また、可動域制限や筋力低下、神経機能低下など、その疾患を起こしうる問題と、その疾患が起こしうる問題も予測できる
  • 実際に個別の評価や介入を開始する前に、上記の予測について患者さんと共有することが信頼関係の構築に大切である

介入例(徒手療法、運動療法、物理療法、その他)

  • エビデンスまたは評価結果に基づいて決定する

患者教育

  • エビデンスまたは評価結果に基づいて指導する
  • 患者さんの自主性を促すことが大切

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